プロローグ














1つの悲しい調べ


それが少年の心を満たす


まるでオルフェウスが奏でる

ハープににた、悲しい調べ


しかし、プルトーンは少年を救わない

オルフェウスのような過ちを犯させない為なのか、

少年を救わない


少年が、心に響くハープをかき鳴らして心のたけを歌い、

もう一度地上へ帰して欲しいと訴えても、

プルトーンは少年を救わない


猛々しい番犬ケルベロスも、冷たい三途の川の渡し守も少年を拒む


失意の少年はまるで、

何もかも失い、殺されたオルフェウスのようだった


ハープを奏でながら山野をさまよい歩いた彼のように

エウリディケの幻を追う彼のように


少年の瞳には

何も映ってはいやしなかった


絶望に打ちひしがれ、

それでも、命を絶つことは許されず、

オルフェウスのようにトラキアの女たちに殺されることもなく生き続ける


そんな少年の心の調べは

オルフェウスのハープに似ていた


ひとり悲しい調べを奏でながら流れを下っていった、ハープに似ていた


やがて海を渡り、

レスボス島に流れ着いたオルフェウスのハープを島の人々は拾い上げ、

アポロの神殿に捧げた。

少年の心のハープも、

一人の男の手により、拾われた


オルフェウスの死を

深く悲しんだオルフェウスの父、太陽と音楽の神アポロは、

オルフェウスのハープを天に上げ、星座に加えたと言う



少年は?


少年の死を悲しむものはいない

少なくとも、

少年はそう思っていた


しかし、男はそうは思わなかった

その男は少年に救いの手を差し伸べた


彼もオルフェウスと少年を重ね合わせたのだろう

少年の心に差し込んだ、一筋の光


少年はその手を取ろうとした

いや、取るはずだった



しかし・・・



間に合わなかった



少年は再び、暗闇に取り残された

一度の叶わぬ救いが少年を更なる絶望へと導いた




更なる深い絶望


それがプルトーン、

―――少年を救うことを拒んだ者――― の、

理由だったのかも知れない



しかし、少年はそれを知らない

ハープは再び少年の心に戻った





そして、少年は今・・・











□ □ □












期待なんかしない

期待なんて裏切られるだけだから


助けを求めても、許しを乞うても、

ただ痣笑われるだけ

誰も何も、信じたくない

だから、信じなくても良いように・・・



死にたかった。


たった、

たったそれだけなのに



神様


なぜ俺は此処にいるのですか?


なんのためにいるのですか?


此処はどこですか?


俺は・・・何ですか?









□ □ □












きっと、目が覚めても、同じ絶望、苦しみが襲う


そう、思っていた



しかし、目が覚めて、俺が最初に見たのは、

何処までも続く絶望でも、黄昏と光の祝福でもなく、


俺の心には不釣り合いな・・、

ただただ、白い天井だった。
















+後書き+


ついに始めてしまった、「好きしょ!」の連載!

ノリとイキオイに任せて書いてしまいました。

まず、プロローグを読み直して思ったこと・・・

意味、分かりません(←正直)

登場人物を神話の民に置き換えてみたのですが・・・

まぁ、連載を読み進めれば、誰が誰なのか分かるはず・・・

・・・た、多分(テキトーだな、オイ)



06.02.13